秋が深まる季節、「鮭が川にのぼってきた」というニュースが盛んに
伝わってきますが、この鮭の産卵にはいくつかの不思議があります。
 まず、鮭は生まれると広い海に出て暮らしますが、なぜ自分の生まれた
川に帰ることができるのかとても不思議ですね。
鮭は自分の生まれた川の水に溶けるわずかな成分の違いをかぎ分けることが
できるといわれます。それは、現代の科学技術でもなしえないほどの
高度な分析能力なのです。
 産卵のために傷だらけで川の上流にのぼった鮭は、直径5〜7mmの
卵が川の流れに流されてしまわないように、尾ヒレを使って小石の川底に
産卵の床を作ります。鮭は、最後の力をふりしぼって幅50cm、長さ1m、
深さ30cmほどの安全な場所を作り、そこに卵を産み落とした後、
再び尾ヒレを使って卵の上に重石となる小石をのせるのです。
こうした仕事をなし終えた親鮭は、力を使い果たして死んでしまいますが、
卵はその2カ月後に孵化(ふか)します。
卵が孵化するためには、適当な酸素が必要です。親鮭はやみくもに卵に
小石をのせているわけではなく、卵がつぶれないように水流や酸素の具合に配慮し、
コンピュータさながらの計算を自然に行っているというわけです。
力をふりしぼっているその姿からはとても想像がつかないほど緻密な営みで
あり、鮭の生命にプログラミングされた不思議といってもいいでしょう。